はじめに
私は新卒で大手ゼネコンに土木施工管理職で就職し、現場、営業を経験し、その後公務員へ転職をしました。新卒の時の就活、施工管理職の仕事内容、昇進、年収、そしてなぜ辞めたのかをお伝えします。
土木施工管理職の仕事内容は?
ゼネコンの土木施工管理職が入社後に配属される部署は①現場監督、②現場の技術支援及び設計、③積算、④営業等となります。人数比は①80:②18:③1:④1程度で、入社後に本人の適性や希望などで分かれていきます。
①現場監督は工事現場の管理運営を行う仕事です。具体的にはトンネル、ダム、高速道路などの土木構造物を品質良く、安く、早く、安全に、環境に配慮して造ることが主な仕事です。ゼネコンは請け負った工事を完成させることで発注者からお金をもらうビジネスですので、現場は会社の利益を生み出すまさにエンジン部分ともいえます。難工事や大規模工事を成功させることで会社に直接的な貢献ができますので、大手ゼネコンの社長や役員は施工管理職あがりの人間がかなりの割合を占めています。具体的にどのようなことをしていたのかは別の記事で詳しく書いていますので、そちらも確認してみて下さい。
②現場の技術支援及び設計は、前例のない工事の施工方法の検討や大規模な土留め工等の仮設工作物の設計、設計施工で請け負った工事の設計などを行います。基本的には施工方法や仮設工作物の検討などは現場監督が行いますが、現場の人間では対応できないような技術的に難易度が高い問題に対して技術的な支援を行います。現場よりも高い技術力や専門性が求められます。
③積算は工事の入札金額の積算を行う部署です。官庁工事の場合、入札金額が安すぎても高すぎても工事を受注できませんので適切な入札金額を積算する必要があります。与えられた情報から工事現場の条件設定を正しく読み取り、正確に計算する緻密さが求められます。
④営業は官庁営業と民間営業に分かれます。官庁営業は入札前に積算や技術に関する情報を集め受注につなげ、民家営業はそれに加え得意先との関係性や独自の技術力によって受注につなげます。最初から営業に配属されることはなく、現場経験を経た後に配属されるケースが多いです。大手ゼネコン4社がリニア中央新幹線の建設工事を巡る談合事件で独占禁止法違反となった事件がありましたが、基本的にそういったことが行われることはありません。一昔前の談合が横行していた時代に比べると、発注者、受注者ともにそういった一部を除いてクリーンな体制にシフトしています。
土木施工管理職の昇進は?
ゼネコンはあくまでも工事請負業なので、会社の幹部も現場をよく知る施工管理職あがりの人間が多くいるのが特徴です。大手四社(鹿島、大成、大林、清水)を見てみると、建築部門を土木部門の売り上げ比はだいたい4社とも7:3で建築の方が多い傾向にあります。よって大手4社の社長には建築施工管理職出身の方が多く、土木施工管理職の昇進は副社長までというのが通例となっています。
現場監督としての一般的な昇進の流れは、現場係員、現場主任、現場工事長、現場所長、支店土木部長、副支店長、支店長、副社長の順になります。現場所長以降は全員がなれる訳ではなく、特に支店長以降は役員級になりますのでごく一握りの人事ということになります。
土木施工管理職の年収は?飯場(はんば)では家賃、光熱費ゼロでお金が貯まる。
入社10年後、およそ現場主任を越えてきたあたりから額面年収1,000万を超えてきます。ただし、残業時間が多いので時給に直すとそこまで高額な給料ではありません。忙しい現場となると7時半出社22時退社くらいが基本の勤務時間になります。また、土木の現場は田舎になることが多く、その場合現場の近くに飯場(はんば・事務所兼宿舎)を構えます。飯場では家賃、光熱費はかからないのでほとんどお金は出ていきません。飯場での暮らしぶりは別の記事で詳しく書いていますので、そちらも確認してみて下さい。
ゼネコンのやりがいとは?
ゼネコンに在籍していてやりがいを感じる場面の一つは、地元の方に直接感謝されたときです。北海道の田舎に高速道路を建設する際には「道路ができれば札幌まで魚を新鮮なうちに出荷できるようになる。ありがとうね。」、風力発電所を建設した際は「立派な風車で地元の自慢になるよ。」といった声をかけてもらい素直に嬉しかったのを覚えています。
また何といっても、自分が関わった大規模構造物を実際に利用者として使ったときには言葉では表しがたい達成感が味わえます。トンネルなどは一瞬で通り過ぎてしまいますが、苦労した場面などが瞬時によみがえり何度通っても飽きないものです。
なぜ大手ゼネコンを辞め、国家公務員を目指したのか
私がゼネコンを辞めた理由は、会社のために自分の時間を犠牲にし続ける覚悟が持てなかったこと、ゼネコンで自分が社会貢献できる範囲の狭さを感じたからです。
ほとんどの現場では、実質残業時間は月100時間を優に超えます。民間企業なので基本的にいかに利益をあげるかどうかが重要であり、社員にはそれが求められます。入社したときにはそういったことに特に違和感は感じませんでしたが、徐々に自分の大切な40年を会社を潤すためだけに犠牲することが不毛に思えるようになりました。もちろん、安全で高品質な土木構造物を造ること自体は立派な社会貢献です。ただ、トンネル一本掘るのに5年、ダム一つに10年掛かかるので、自分が会社人生で携われる範囲はごくごく限られます。社会人として40年間働いた成果が「高速道路の○○区間の○○トンネルを造った」ということよりも、国家公務員としてより社会全体に関わっていく方が退職後の満足感が大きいのではと考えるようになり退職を決意しました。
まとめ
ゼネコンは年収も高くやりがいもあり、土木工学を志した学生にとってはものづくりの最前線で自分の力を発揮できる最高の場所だと思います。現場で発生する問題に対しては、土木技術的な視点だけではなく、さまざまな視点からのアプローチが求められます。そういった意味で、求められる能力は多岐に渡り、飽きることのない仕事だとも言えます。
私の選択については、同僚からは賛否両論でしたが後悔は全くありません。結局は自分の思った道を進むのが一番良いと思います。残った同僚には日本の誇れる安心安全なインフラ整備、土木技術の発展に貢献してほしいと思っています。ゼネコンへの就職を考える方の参考に少しでもなれば幸いです。